加子母のけいちゃんは、醤油味

出典:米騒動が起きるほどご飯がすすむ【けいちゃん】 – 料理研究家リュウジのバズレシピ
岐阜県中津川市の最北端、加子母(かしも)地区。
面積114.16平方キロメートルのうち94%が山林という、山あいの集落です。
人口は2,291人、944世帯(2026年4月1日現在・中津川市公式)。
ここで昔から食べられてきた郷土料理が「けいちゃん」、正式には「鶏ちゃん」です。
味噌味が主流の郡上市や、醤油・味噌・塩と店ごとに違う下呂市に対し、岐阜県観光公式サイトは「醤油味で食べるのが、中津川流です」と明記しています。
加子母のけいちゃんは、味噌ではなく醤油。これが最大の特徴です。
「発祥地」ではなく「名物の地」

出典:【奥美濃旅行】ひるがのSA名物「けいちゃん丼」郡上八幡城【ぶらり旅】”Travel Japan Vlog” – ぶらり旅電池式動画製作所
インターネット上には「けいちゃんは加子母が発祥」とする個人サイトの情報も見られます。
しかし農林水産省「うちの郷土料理」が挙げる伝承地域は、郡上市・下呂市・高山市南部の3つ。加子母の名前はここに入っていません。
岐阜県観光公式サイト「岐阜の旅ガイド」の位置づけも、けいちゃんは「南飛騨地方の郷土料理」であり、加子母は「名物でもある」地域という表現にとどまります。
提供店舗数でも差は明らかです。同サイトによると郡上市明宝で15店以上、下呂市で30件以上に対し、加子母は数店規模。
けいちゃん文化圏の中心ではなく南端に位置する集落。これが公式資料から見える加子母の立ち位置です。
廃鶏とジンギスカンから生まれた料理

出典:『簡単でご飯が進み箸が止まらない鶏ちゃん(けいちゃん)』Gifu Specialty Keichan – 【みそ道】味噌ソムリエ×栄養士監修
けいちゃんの原型は、卵を産まなくなった採卵鶏、いわゆる廃鶏を盆や正月に食べたことにさかのぼります(農林水産省)。
料理として形になったのは1950年ごろ。当時各地で流行っていたジンギスカンを真似て焼いたのが始まりとされています。
昭和30年代に入ると大規模養鶏が普及し、安い廃鶏が出回るように。伊勢湾台風の復旧工事やダム工事で働く人が増えたことも、安価な焼肉スタイルが広まった一因です。
昭和35年ごろから地元の精肉店や居酒屋が独自に味付けを工夫し、地域ごとの個性が生まれました。「けいちゃん」という呼び名が下呂から郡上へ広がったのは昭和50年代のことです。
加子母では、この鶏肉料理を地元ブランド鶏「恵那鶏(恵那どり)」で作るのが定番になっています。
「加子母っ子ケイちゃん」を作った店長のこだわり

出典:【ご挨拶】初めまして、けいちゃんです! – けいちゃん / Keichan
加子母のスーパー「アトラ」生鮮部門は、約10年前にオリジナル商品を開発しました。
きっかけは店長・梅ちゃんの「自社のオリジナル商品があるといいな」という発想。地元の伝統料理けいちゃんに目をつけ、「加子母っ子ケイちゃん」(醤油味・みそ味)が生まれました。
同時に、鶏の皮・肝・心臓を味噌味で仕立てた「キモかわいい」という商品も誕生しています。
梅ちゃんが語る食べ方のコツはシンプルです。
加えるのはキャベツと玉ねぎだけ。それ以上具材を足すと「ただの野菜炒め」になってしまうといいます。
キャベツとよく混ぜてなじませ、そのまま焼く。これが加子母流の食べ方です。
なお加子母では、けいちゃんは各家庭が古くから作ってきた正月料理という側面も持っています。
道の駅・ふるさと納税で加子母のけいちゃんを味わう
加子母で長年焼肉店を営んだ「炭火焼肉 大臣」(加子母1267-1)は、店主の自宅がある下呂市上原地区に製造拠点を移しています。
商品は「大臣の鶏ちゃん ノーマル」550円/200g(道の駅かしも ゆうらく館オンラインショップ)。レギュラー・ひね・赤辛・味噌・セセリの5種展開で、下呂市のふるさと納税返礼品にもなっています。
ふるさと納税なら、中津川市の「加子母ケイちゃんと旨豚の焼肉セット」(寄付金額13,000円)が代表的。鶏肉500g×2に豚トロ・豚バラの塩麹漬けが付き、提供はアトラ生鮮館です。
地元の定食店で食べる場合、鶏ちゃん1人前は600円台からと伝えられています。地域の飲食店情報をもとにした数字のため、価格は変動する可能性があります。
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まとめ
加子母のけいちゃんは、郡上や下呂のような「発祥地」ではなく、醤油味という個性で名物になった料理です。
農水省や県の公式資料は加子母を伝承地域の筆頭に挙げていませんが、恵那鶏を使った醤油ダレと、アトラ生鮮館・大臣といった地元の作り手が、独自のけいちゃん文化を今に伝えています。
道の駅かしもや中津川市のふるさと納税を通じて、この醤油味は加子母の外へも広がりつつあります。
