「子どもの頃から周りに合わせるということが苦痛で、ずっとできなかったんです……」
本屋大賞を2度受賞した作家の言葉です。
語ったのは凪良ゆうさん。「凪良ゆう 合わない」で検索すると、答えは2つに分かれます。1つは一部の読者が作品を「合わない」と感じていること。もう1つは凪良さん自身が「合わせる」ことを苦手としてきたことです。
実はこの2つ、根っこでつながっています。
凪良ゆう作品が「合わない」と感じる読者の声

出典:『汝、星のごとく』横浜流星✕広瀬すず✕凪良ゆうSPECIAL TALK part1 – 東宝MOVIEチャンネル
ネット上の感想を追うと、引っかかりどころは3つに絞られます。
| 作品 | 読者がつまずいた点 |
|---|---|
| 『汝、星のごとく』 | 話が重く共感しにくい/登場人物が自分勝手に見える |
| 『流浪の月』 | 倫理観を揺さぶる設定への拒否感 |
| 作品全体 | 価値観そのものが噛み合わない |
『流浪の月』は、読者の間でも「好き嫌いが分かれそう」という評が目立つ一冊です。
読後感が重い。人物に寄り添えない。そもそも価値観が違う。
どれも文章の上手い下手への不満ではありません。描かれる世界の「温度」が自分と合わなかった、という反応です。
「人と人は分かり合えない」が凪良作品の土台

出典:これはもう一つの『汝、星のごとく』。原作文庫CMを公開!#汝星のごとく #凪良ゆう #講談社 – 講談社文芸
凪良さんは「人と人は分かり合えない」というのが自分の基本的な考え方で、小説で書き続けていることにも重なると語っています。
合わないと感じる読者がいるのは、ある意味でこの前提どおりの結果です。
家族より他人同士
一般文芸の作品には「家族より他人同士の方が生きやすい」というテーマが一貫して流れています。本人の言葉はこうです。
> 家族って、私にとっては怖いものなんです
家族の温かさを物語に求める読者ほど、ここで違和感を抱きやすい構図です。
救いは「一瞬」でいい
それでも、突き放しているわけではありません。
> 分かり合えないからこそ、『分かる』と感じられる一瞬があったらもうそれで十分
大団円を期待すると肩透かし。小さな一瞬を拾える人には深く刺さる。賛否が割れる理由は、この設計にあると考えられます。
凪良ゆう本人も「周りに合わせる」のが苦手だった

出典:結婚にまつわる小説SP!凪良ゆう新刊『多類婚姻譚』を深掘り!多様性の時代で執筆のきっかけは…?【あの本、読みました?】 – テレ東BIZ ダイジェスト
冒頭の言葉は、会社員を続けたかったかと問われたときの答えでした。
作家になる前はアルバイトを転々とし、専業主婦だった時期もあります。
家事をしなくなるほど書くことに没頭し、「そんなに好きならプロになれば」と言われたのがきっかけ。集団に溶け込むのではなく、ひとりで書く道を選んだ形です。
影響を受けた作家には、氷室冴子さん、新井素子さん、秋月こおさんの名前を挙げています。
「普通」の枠に収まれない感覚を抱えたまま、書く側に回った人。作中の人物が世間の正解からはみ出していくのも、自然な流れに見えてきます。
BLから一般文芸へ 「合わない」が武器に変わるまで

出典:『汝、星のごとく』横浜流星✕広瀬すず✕凪良ゆうSPECIAL TALK part2 – 東宝MOVIEチャンネル
2006年、「小説花丸」に『恋するエゴイスト』が掲載。2007年に初の著書『花嫁はマリッジブルー』が刊行され、本格的なデビューを果たしました。
ところがデビュー直後は苦しい時期が続きます。書きたいものと、書かせてもらえるもののギャップが大きすぎたのです。
「善」を求められるジャンルからの移籍
BLは恋愛を扱うジャンルなので、「善」を求められることが多かったと凪良さんは振り返ります。それに慣れていたぶん、一般文芸は受け入れる幅が広いと感じたそうです。
2017年の『神さまのビオトープ』で高い支持を集め、2020年には『流浪の月』で本屋大賞へ。受賞当日は、新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出された日でした。
BLの枠では収まりきらなかった部分が、一般文芸では個性として評価された。経歴そのものが「合う場所」探しの物語です。
「合わない」声の一方で、凪良ゆうが読まれ続ける理由

出典:【ホンのさわりを…読むライブ】凪良ゆうさん「多類婚姻譚」読書会 いまどきの結婚って?【NIKKEI LIVE】 – 日本経済新聞
賛否が割れることと、売れないことは別の話です。
- 2023年4月12日:『汝、星のごとく』で本屋大賞2023(2度目の受賞)
- 2023年:第10回高校生直木賞、キノベス!1位
- 2024年時点:『汝、星のごとく』『星を編む』シリーズ累計70万部
- 最新刊『多類婚姻譚』:第175回直木賞にノミネート、12万部突破と紹介
注目したいのは高校生直木賞です。重いテーマでも10代の票を集めた事実は、「合わない」層の外側に広い支持があることを示しています。
映画化で品切れも
映画『汝、星のごとく』は横浜流星さんと広瀬すずさんのW主演。凪良さん本人がXで、映画公開に伴って品切れが続き、急ぎ重版してもらっていると明かしました。
最新作のテーマは「噛み合わせの悪さ」
『多類婚姻譚』について、凪良さんは「自分らしく生きること」と「誰かとともに生きること」を両立できる相手に出会えたら幸せだが、現実には噛み合わせが悪い、と語っています。描きたかったのは、そこで悩む人たちでした。
「合わない」は読者の感想であると同時に、作家が正面から書き続けているテーマでもあるわけです。
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まとめ:凪良ゆうと「合わない」の関係

出典:【速報】本屋大賞に凪良ゆうさん 「汝、星のごとく」 – 共同通信 KYODO NEWS
- 読者の「合わない」は、話の重さ・人物の身勝手さ・倫理観を揺さぶる設定に集中
- 作風の土台は「人と人は分かり合えない」という本人の考え方
- 凪良さん自身も「周りに合わせることが苦痛だった」と語っている
- BLで求められた「善」から離れ、一般文芸で評価を確立
一度「合わない」と感じた人でも、噛み合わない人たちそのものを描いた『多類婚姻譚』なら、読み味が違って見えるかもしれません。第175回直木賞にノミネートされた最新刊が、試し読みの入口になります。
