凪良ゆうの作風は「善人だけの話」を書かないこと 本人の言葉で読む5つの軸

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凪良ゆうの作風の核は「善も悪もフェアに」

【本屋大賞2023大賞】凪良ゆう『汝、星のごとく』を解説!

出典:【本屋大賞2023大賞】凪良ゆう『汝、星のごとく』を解説! – ひろみ司書CH

登場人物が全員善人という話を、一度も書いたことがない。

そう明かしたのは、本屋大賞を2度受賞した小説家・凪良ゆうさんです。2022年9月のReal Soundのインタビューでは、「人間の中にある善も悪もフェアに書きたい」と語りました。

代表作『汝、星のごとく』にも、「正しい人」はほとんど出てきません。

2026年6月の現代ビジネスでは、さらに踏み込んでいます。

> 「完全な善人も完全な悪人もいなくて、誰がその人を判断するかによって変わります」

「クズだけど悪人ではない」人物の描き方

この考えがよく表れているのが、『汝、星のごとく』に登場する櫂の母親についての発言です。

「クズなんだけど心底悪人ということではなく、心の弱い人なんだろうな」

切り捨てるのではなく、弱さとして描く。凪良作品を読み終えたあとに、誰かを責めきれない感覚が残るのは、この人物の描き方によるところが大きいと考えられます。

作風の原点はBL時代に感じた「不本意」

『汝、星のごとく』横浜流星✕広瀬すず✕凪良ゆうSPECIAL TALK part1

出典:『汝、星のごとく』横浜流星✕広瀬すず✕凪良ゆうSPECIAL TALK part1 – 東宝MOVIEチャンネル

2007年、白泉社からBL作家としてデビュー。多いときは年に8冊の新作を出していました。

当時のBL小説には、性描写を前半・中盤・後半の少なくとも3回入れる決まりがありました。2024年4月のReal Soundで、本人はこう振り返っています。

> 「展開のために感情をつくりこんでいくのは、作家としてものすごく不本意でした」

性描写そのものが嫌だったわけではありません。「流れにそぐわないことはしたくない」というのが本人の考えです。

感情が先にあって、展開はあと。この順番へのこだわりが、のちの作風の土台になりました。

「重い現実を持ち込まないで」と言われて

Business Insider Japanの取材では、BLの編集者から「夢の世界なので、あまり重い現実を持ち込まないでください」と言われたと明かしています。

一般文芸に移ってからは、テーマを深く掘り下げられると感じたそうです。ヤングケアラーを扱った『汝、星のごとく』は、その代表例です。

長い時間と交互の視点で描く作風

【本紹介】凪良ゆう『汝、星のごとく』で号泣。読書好きアラサーの率直な感想レビュー

出典:【本紹介】凪良ゆう『汝、星のごとく』で号泣。読書好きアラサーの率直な感想レビュー – kirinは休職中

時間をかけて進む物語が好き。凪良さんはそう公言しており、2022年時点で約40冊ある著作でも、そうした作品を比較的多く書いてきました。

『汝、星のごとく』が描くのは、主人公2人の15年間です。書き上げるまでに2年かかりました。

2人それぞれの「正義」を書くための構成

同作では、暁海と櫂の視点が交互に入れ替わります。狙いは、2人それぞれの正義を書くことでした。

多視点の構成に初めて挑戦したのは、2019年12月刊行の『わたしの美しい庭』です。

一方から見れば身勝手でも、もう一方から見れば切実。視点を分けることで、「善も悪もフェアに」という考えを物語の構造にしているといえます。

ちなみに、暁海の目に映る島の場面だけは、プロットの段階からほとんど書き直していないと本人は話しています。

「普通の枠から零れ落ちた人たち」を描く理由

ワールドニュースです。 15歳で1人で生きる決意、本屋大賞の作家・凪良ゆうさんを絶望から救った「物語」

出典:ワールドニュースです。 15歳で1人で生きる決意、本屋大賞の作家・凪良ゆうさんを絶望から救った「物語」 – ワールドニュースチャンネル

凪良作品は「普通の枠から零れ落ちた人たち」を描いている、とよく評されます。

ただ、本人の見方は少し違います。「多様性のなかにはちゃんと“普通”も含まれる」。

『わたしの美しい庭』のインタビューでは、「集まるというのは、排除することと同義」とも語りました。

同性愛の描き方にも、この視点が表れています。一般小説では、権利を勝ち取る姿勢で描かれがちだと感じていたそうです。そのうえで書きたかったのは、社会と戦うことに疲れた人や、ただ穏やかに生きたい人でした。

物語は「しんどさを共有」する場所

子どもの頃の本人にとって、物語は「逃避」の意味が強く、生き延びるために必要なものでした。

今の言葉はこうです。

> 「物語のなかでくらいは、しんどさを共有したいのだと思います」

逃げ込む場所だった物語を、いまは誰かとしんどさを分け合う場所として書いている。そう読むと、作品が変わっても作風に一貫性がある理由が見えてきます。

最新作『多類婚姻譚』に見る作風の現在

【書評】息抜きできないほどリアル。凪良ゆうさん『多類婚姻譚』

出典:【書評】息抜きできないほどリアル。凪良ゆうさん『多類婚姻譚』 – むらかみ弁護士の本棚@神戸

2026年5月27日に講談社から刊行された『多類婚姻譚』は、5編からなる連作短編集です。同年7月には第175回直木賞の候補になりました。

結婚がテーマになったのは、実は偶然でした。1作目を書いた時点ではそのつもりがなく、編集者に指摘されて、婚姻にまつわる話が並んでいると気づいたそうです。

本人は、この本に「個人の生き方と、現代の結婚制度がかみ合わなくなってきている」ことが表れていると話しています。

同じ人物が別の話にも出てきて、そのたびに印象が変わる構成です。「誰が判断するかで変わる」という自身の言葉を、そのまま短編集の形にしたような一冊です。

最初の一般文芸作品は売れなかった

この作風が、最初から受け入れられたわけではありません。

2017年4月刊行の『神さまのビオトープ』は、出た当初は売れませんでした。流れを変えたのは、紀伊國屋書店梅田本店の書店員です。売り場で展開し続けた結果、2019年には同店でフェアが開かれ、同作は累計10万部を突破しました。

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まとめ:凪良ゆうの作風を5つの軸で整理

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  • 善も悪もフェアに書く:全員が善人の話は書いたことがない
  • 感情が先、展開はあと:BL時代の「不本意」が原点
  • 長い時間:『汝、星のごとく』は主人公2人の15年を描く
  • 交互・複数の視点:2人それぞれの正義を書くための構成
  • 零れ落ちた人と「普通」:しんどさを共有する物語

2026年10月には、映画『汝、星のごとく』(藤井道人監督、横浜流星・広瀬すずのW主演)が公開されました。

小説では交互に切り替わっていた2人の視点を、映画はどう描いたのか。原作と見比べると、凪良ゆうの作風がどこにあるのかがよく分かります。

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