津田健次郎がTikTok提訴、AI声クローン188本の経緯と争点

1動画あたりの平均再生回数、約147万回。

フォロワー21万人、推定月収50〜75万円——そんな「稼ぐアカウント」を支えていたのは、声優・俳優の津田健次郎(ツダケン)の声を生成AIで模倣したとされる音声だった。

2025年11月、津田は東京地裁にTikTok運営会社を提訴。日本初とみられる「生成AIによる声の無断模倣」訴訟が始まった(日本経済新聞報道)。

目次

188本の動画、約1年半にわたる模倣の実態

津田健次郎さんがTikTok提訴 生成AIで声を模倣した動画の削除求める(2026年5月25日)

出典:津田健次郎さんがTikTok提訴 生成AIで声を模倣した動画の削除求める(2026年5月25日) – ANNnewsCH

2024年7月から2025年9月にかけて、氏名不詳のTikTokアカウントが都市伝説・オカルト・雑学系の動画を大量投稿した。

問題の動画本数は188本。ナレーションには、津田の声を生成AIで模倣したとされる音声が使われていた。

データ 数値
投稿期間 2024年7月〜2025年9月(約14ヶ月)
合計投稿本数 188本
1動画の平均再生回数 約147万回
アカウントフォロワー 約21万人
推定月収 50万〜75万円

年換算すると約900万円規模。「AI声クローン」の経済的インパクトが数字として見えてくる。

アカウント主はSNS上で「友人の声をAIに学習させて作成した」と主張。TikTok側はこの発言を援用し、請求棄却を求めている。

なぜTikTokが被告になったのか、2本立ての法的根拠

声優の津田健次郎さんが「TikTok」運営会社を提訴 生成AIで声を無断模倣か…動画削除求める(2026年05月24日)

出典:声優の津田健次郎さんが「TikTok」運営会社を提訴 生成AIで声を無断模倣か…動画削除求める(2026年05月24日) – FNNプライムオンライン

提訴の被告はTikTok運営会社(ByteDance傘下)とアカウント主の2者。津田側の主張は2本立てだ。

① パブリシティ権侵害

著名人の声を無断で商業利用したとする主張。津田の声そのものに財産的価値があるという位置付けだ。

② 不正競争防止法

津田の声を「商品等表示」とみなし、その無断利用を問う構成。プラットフォームとしてのTikTok側も責任主体に含める法的根拠になっている。

日本経済新聞の報道によれば、「声のパブリシティ権」をめぐる訴訟は日本初とみられる。

TikTok側の反論は「ナレーションは普遍的な男性の声であり、津田の声との類似性はない」というもの。声の類似性の有無が、最大の争点の一つだ。

「ツダケンの声がする」コメントが証拠になる時代

津田健次郎さんが動画削除求めTikTokを提訴 東京地裁 「パブリシティ権を侵害」 氏名不詳のアカウントが声を模倣したナレーション付きの動画投稿|TBS NEWS DIG

出典:津田健次郎さんが動画削除求めTikTokを提訴 東京地裁 「パブリシティ権を侵害」 氏名不詳のアカウントが声を模倣したナレーション付きの動画投稿|TBS NEWS DIG – TBS NEWS DIG Powered by JNN

ちょっと意外な話がある。

読売新聞の報道によると、動画の視聴者が残したコメント「ツダケンの声がする」が、声の類似性を立証するための証拠として法廷に提出されているという。

AIで模倣された声の「類似性」をどう証明するか——既存の法律にそのための明確な基準はない。

視聴者の自然な反応が証拠として機能することになった。AI時代ならではの、前例のない法廷戦略といえる。

口頭弁論は2026年夏、声の権利をめぐる初の司法判断へ

声優・津田健次郎さん AIによる「声の無断模倣」動画の削除求めTikTok運営会社を提訴 会社側は「普遍的な男性の声」と反論し棄却求める|TBS NEWS DIG

出典:声優・津田健次郎さん AIによる「声の無断模倣」動画の削除求めTikTok運営会社を提訴 会社側は「普遍的な男性の声」と反論し棄却求める|TBS NEWS DIG – TBS NEWS DIG Powered by JNN

2026年5月現在、非公開の弁論準備手続きが3回実施済み。The Japan Timesの報道によると、初の口頭弁論は2026年夏に予定されている。

津田健次郎のプロフィール

1971年6月11日生まれ、大阪府出身。事務所はアンドステア。

代表作は『遊☆戯☆王』の海馬瀬人、『呪術廻戦』の七海建人、『チェンソーマン』など。第15回声優アワード主演男優賞(2021年)を受賞している実力派だ。

この訴訟が持つ意味

声のパブリシティ権は、法的整備が十分に追いついていない領域だ。

この裁判で示される判断は、声優や俳優だけでなく、AI音声を使うサービスやコンテンツ全体の扱いに影響を与えうる。

声のパブリシティ権に関する日本初の司法判断として、2026年夏の口頭弁論の行方が注目される。

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