2026年5月24日、全仏オープン(ローラン・ギャロス)の開幕日。
世界1位のヤニック・シナーやイガ・シフィオンテクらが記者会見をわずか15分で打ち切り、退席しました。
これはメディアへの反発ではなく、大会主催者への抗議行動です。「賞金の分配率が低すぎる」——その訴えを行動で示した瞬間でした。
賞金総額は増えているのに…問題は「分配率」にある

出典:ヤニック・シナー 2025年コートレベルのベストポイント集【4K 60FPS】 – Tennis with Shane
知ってほしいのは、これが「もっと払え」という単純な要求ではないという点です。
2026年全仏の賞金総額は6170万ユーロ(約72億円)。前年比9.5%増です。
ところが大会収益の見込みは4億ユーロ超(約732億円)。
計算すると、選手への分配率は約14.9%。2024年の15.5%からさらに低下しています。
ATP/WTA1000大会では収益の22%が選手に分配されます。
グランドスラムとの差はおよそ7ポイント。選手側が要求しているのは、この「22%」への引き上げです。
2025年の大会収益は前年比14%増の3億9500万ユーロ(約722億円)を記録したにもかかわらず、選手への賞金増加はわずか5.4%にとどまりました。
大会が儲かるほど、相対的に選手の取り分が減っていく構図です。
書簡→共同声明→ボイコット 1年越しの抗議の経緯
この問題は2026年になって突然起きたわけではありません。
2026年4月、男女トップ10選手が連名でグランドスラム主催者に書簡を送付。回答を求めました。
しかし返答は期待外れのものでした。
シナーはローマ大会の記者会見でこう語っています(tennisclassic.jpの報道より)。「1年経っても望んでいる結論に全く近づいていない。それは良くない。敬意が感じられない」
2026年5月3日、シナー、アルカラス、サバレンカ、シフィオンテクらトップ選手約20名が共同声明を発表。賞金配分への深い失望を公式に表明しました。
そして全仏開幕の5月24日、メディアデーで記者会見の「15分退席」が実行されています。
なぜ「15分」なのか
この数字には明確な意味があります。
グランドスラムが選手に分配している収益の割合「約15%」を象徴する数字として、意図的に選ばれました。
ESPNやYahoo Sportsの報道によると、サバレンカも試合後の記者会見で早期退席を実施しており、抗議は大会期間中も継続されています。
「リスペクトの問題だ」 シナーら選手の言葉

出典:【ヤニック・シナーのストロークの秘密】テニス 重心の位置と前方のインパクトが可能にする超高速プレー – コミュニティーみんラボ
抗議の中心にいるシナーは、ローマ大会の記者会見でこう断言しました(tennisclassic.jpの報道より)。
「これはリスペクトの問題だ。私たちは受け取っているものより、はるかに多くを大会に提供している。これはトップ選手だけでなく、すべての選手にとっての問題だ」
テニスは個人競技でありながら、これだけ多くの選手が一致団結して行動に出ているのは異例のことです。
2025年全仏女王のガウフも、選手が一体となって動いていることへの誇りを表明しています。
一方で、元世界1位のアンディ・ロディックはボイコット論について「現実的ではない」と苦言を呈しており(THE DIGESTの報道より)、元トップ選手の間でも意見は割れています。
意外と知られていないのが、この交渉の構造的な難しさです。
通常のATP/WTAツアー大会なら選手団体が交渉力を発揮できます。しかしグランドスラムは独立した運営構造を持つため、選手側の交渉力が構造的に制限されています。
現在は選手側の交渉代理人として、元WTA会長のラリー・スコット氏が主催者側との折衝にあたっています。
主催者は「変更なし」 今後の注目点

出典:【戦術解説】もうこれ現役最強のストロークだろ…【ヤニック・シナー/USオープン】 – モリス@海外テニス情報
全仏大会ディレクターのアメリ・モーレスモは、ESPNの報道によるとこう公式表明しました。「2026年の賞金は変更しない」
フランステニス連盟(FFT)は選手の声を「真剣に受け止めている」としつつも、現行配分の維持を表明。今年の大会中に分配率が変わる可能性は低い見通しです。
選手側の22%要求 vs. 主催者の現状維持——この構図は全仏オープン2026にとどまらず、グランドスラム全体の収益配分のあり方を問い直す議論として、今後も続きそうです。
大会は6月7日まで続きます。抗議行動がどう展開するか、また他のグランドスラムへの波及があるかが注目点です。
