見上愛は朝ドラで下手なのか?『風、薫る』への批判を時系列で検証した

放送中の半年間、主演女優は自分に関するニュースを一度も見ていません。

エゴサーチをしない。SNSも開かない。

2026年度前期の連続テレビ小説『風、薫る』でヒロインを務めた見上愛さん、25歳のことです。

その名前で検索すると「下手」という語が並びます。ところが批判的な報道を1本ずつ当たっていくと、演技そのものを否定した記事がほとんど見つかりません。矛先は別のところに向いていました。

目次

朝ドラ批判の矛先は「下手」ではなかった

【風、薫る】見上愛さん朝ドラ直後の「あさイチ」プレミアムトークで、佐野晶哉さんがアドリブだったとバラす:ネタバレ注意|上坂樹里|NHK

出典:【風、薫る】見上愛さん朝ドラ直後の「あさイチ」プレミアムトークで、佐野晶哉さんがアドリブだったとバラす:ネタバレ注意|上坂樹里|NHK – 朝ドラ推し活

放送開始の翌日、2026年3月31日に広がったのはナレーションの聞き取りやすさを心配する声でした。「滑舌が良くない」という視聴者の投稿が拡散し、FLASHが報じています。本編のナレーションを担当したのは研ナオコさん。

9月1日の第112話では、りんの母・美津役だった水野美紀さんの退場が本編ではなくナレーションで処理され、「展開が雑」という受け止めが出ました。

4月29日に女性自身が伝えた不満も、「罵り合う場面ばかり」「暗いし朝ドラなのに」という脚本と展開に向けられたもの。

主演2人の演技を名指しで酷評した記事は、確認できません。作品への不満が、検索窓のなかで主演の名前と結びついた——そういう構図です。

『風、薫る』の視聴率が検索を生んだ

【風、薫る】最終回のその後。りんと直美の物語/鈴木雅の引退/大関和の関東大震災での活躍/上坂樹里/見上愛/風薫るネタバレ

出典:【風、薫る】最終回のその後。りんと直美の物語/鈴木雅の引退/大関和の関東大震災での活躍/上坂樹里/見上愛/風薫るネタバレ – 朝ドラファンch

3月30日の初回は世帯14.9%、個人8.3%。前作『ばけばけ』の16.0%を1.1ポイント下回るスタートでした。

日付 世帯視聴率
初回 3月30日 14.9%
最高(第48回) 6月 16.9%
最低(第94回) 8月6日 10.4%

期間平均は7月末時点で13.9%、8月末で13.8%と0.1ポイント下げました。産経新聞によれば、最低を記録した第94回は広島平和記念式典の中継で放送が午前7時45分に繰り上がった回にあたります。

最終的な平均は13%台が確実で、朝ドラ史上最低とされる『おむすび』の13.1%に次ぐ水準。

数字が繰り返し記事になれば、原因を主演に求める検索が増えます。「下手」というサジェストは、そこから育ったとみるのが自然でしょう。

W主演で分かれた出番と、レビューの評価

見上愛が朝ドラ『風、薫る』主演に選ばれた本当の理由とは?なぜ今、見上愛なのか?朝ドラ起用の背景を徹底分析。朝ドラ新時代の顔?見上愛主演抜擢を冷静に読み解く

出典:見上愛が朝ドラ『風、薫る』主演に選ばれた本当の理由とは?なぜ今、見上愛なのか?朝ドラ起用の背景を徹底分析。朝ドラ新時代の顔?見上愛主演抜擢を冷静に読み解く – 朝ドラの予想

『風、薫る』は一ノ瀬りん役の見上さんと、大家直美役の上坂樹里さん(21)によるダブル主演です。明治期に看護婦という職業を確立した2人の女性を、視点を切り替えながら描く構成。

1人あたりの登場時間は、従来の朝ドラヒロインより当然少なくなります。

9月16日に出た最終回目前のレビュー(エンタメNEXT)は、W主演2人の芝居が「通常の朝ドラヒロインとしては少なめだった」と指摘し、「もっと演技を見たかった視聴者も多かっただろう」と結んでいました。

下手だから見たくない、ではありません。足りないから見たかった、です。この2つはまるで違う評価でしょう。

同じレビューは島田健次郎役の佐野晶哉さんを「大げさになりすぎない自然体の演技」、原田泰造さんを「温かな存在感」として挙げています。

演技の評価は、賞と起用理由に表れている

見上愛は演技うまい?へた?

出典:見上愛は演技うまい?へた? – 演技トーク

朝ドラ放送開始の17日前、2026年3月13日。見上さんは第49回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞しました。映画『国宝』の芸妓・藤駒役です。

日本舞踊、三味線、芸妓の所作を稽古し、藤駒の10代から30代までを演じ切った役。授賞式では親友の河合優実さんを見て声を震わせ、「この仕事を始めようかなと思うきっかけになった」と語ったとシネマトゥデイが伝えています。

そもそも朝ドラ起用の決め手も演技でした。制作統括の松園武大さんが挙げたのは、大河『光る君へ』の藤原彰子役で見せた「表現力と存在感」

RealSoundは『風、薫る』のりんについて「強さと迷いを両立させる」「内に秘めた迷いを感じさせる芝居も印象的」と評しました。

6月には上半期ブレイク俳優ランキング女性編で1位。オリコンの集計です。

批判を「見ない」を貫いた半年間

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出典:FANTASTICS佐藤大樹&見上愛、つらいシーンが多い?ドラマ「liar」撮影の裏側を明かす – MANTAN TV

ここが見上さんの特異な点かもしれません。

『風、薫る』の撮影期間中、本人はSNSもニュースも一切見ない方針を通していました。2021年10月のインタビューでもエゴサーチをしないと答えており、姿勢は5年前から変わっていません。

制作関係者は女性自身に対し、「役と作品に集中するため」「長期放送で批判を意識しすぎるとつらいので必要な精神力」と説明。現場ではよく笑い、出演者やスタッフを引っ張っていたといいます。

対照的なのが『虎に翼』の伊藤沙莉さんです。「めちゃくちゃエゴサーチするタイプ」「批判も見てくれている証拠」と語っていました。

どちらが正しいという話ではなく、半年130回という長丁場との付き合い方が2通りある、ということ。

視聴率の数字も、ナレーションへの指摘も、本人の耳には届いていない前提で演じ切った——そう考えると、りんの表情の揺れなさにも別の見え方が出てきます。

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まとめ

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  • 「見上愛 下手」という演技批判のまとまった報道は確認できない
  • 批判はナレーションの聞き取りやすさ、脚本の暗さ、第112話のナレーション処理に集中
  • 期間平均13.8%という低水準が、主演名での検索を押し上げた
  • 上坂樹里さんとのW主演で、1人あたりの出番は従来より少ない構成
  • 日本アカデミー賞新人俳優賞、上半期ブレイク俳優1位という評価が並行して存在する

検索サジェストは、多くの人が打ち込んだ言葉の集積です。ただし打ち込んだ理由までは記録されません。「下手」と入力した人の大半は、実のところ視聴率の記事を読んだ直後だったのかもしれない。

『風、薫る』は9月21日からの最終週「道標」を経て、9月25日に全130回の最終回を迎えます。

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この記事を書いた人

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