やりの向きと、投げる自分の体の向き。たったそれだけを合わせる意識で、日本記録が1m54も伸びました。
2026年9月12日(現地時間)、ハンガリー・ブダペストで開催された世界陸上アルティメット選手権、女子やり投決勝でのことです。
北口榛花選手(28、日本航空)が2投目に68m92をマークし、自身が持つ日本記録67m38を更新して優勝しました。
新設大会の初代女王となり、賞金15万ドル(日本円で約2300万円)を手にしています。
2投目の雄叫びと、修正されたたった一つのポイント

出典:北口榛花 日本新記録68m92で優勝 瞬間!【第1回アルティメット世界陸上】 2026年9月13日 – 893チャンネル
1投目は61m15。この時点では3位でした。
2投目に向けてコーチから受けたアドバイスは「やりの向きと自分の向きを合わせるように」というものだったといいます。
月刊陸上競技の取材に、北口選手は「1投目は斜めに飛んでいったので」と修正点を説明しています。
雄叫びとともに放った2投目が68m92。ここで首位に浮上しました。
3投目以降は記録を伸ばせず、本人は「めちゃくちゃ嬉しいのと、残りの2投はもうちょっとちゃんと投げたかった」ともコメントしています。
故障、予選敗退、コーチ変更。この1年の低迷

出典:【北口榛花】弾ける笑顔の裏にあった怪我・プライドとの戦い。明かした世界一への覚悟。|Turning Point_TEAM JAPAN TV 【陸上競技 やり投げ】 – TEAM JAPAN
涙をのんだ東京世界陸上
2025年6〜7月、北口選手は右肘の炎症に苦しみ、7月の日本選手権を棄権しました。
同じ年の9月、地元開催となった東京世界陸上では予選敗退。悔しさに涙を見せています。
ゼレズニーという選択
2026年1月、7年間指導を受けたデイビッド・セケラックコーチとの契約が終了しました。
翌2月、男子やり投の世界記録保持者ヤン・ゼレズニー氏(チェコ)の南アフリカ合宿に参加。5月1日、正式に新コーチ就任が発表され、フォーム改造に着手しています。
シーズン序盤は苦戦が続きました。
- セイコーゴールデングランプリ:60m36で5位
- ダイヤモンドリーグ厦門:60m08で7位
それでも6月の日本選手権では復帰後最長となる62m86をマーク。2年ぶり5度目の優勝を飾りました。
9月5日のダイヤモンドリーグファイナルでも65m44で2位に入り、大会本番へ勢いをつけていました。
賞金15億円、「8-8-6-4」新設大会のルール
アルティメット選手権はワールドアスレティックス主催の新設大会です。
総賞金は1000万ドル(約15億円)。陸上界では最高額の大会だといいます。
出場は各種目8人。試技は全4回で、1・2投目は全員、3投目は上位6人、4投目は上位4人だけが投げられる「8-8-6-4」システムを採用しています。
世界陸上と違って国別の出場枠制限がないのも特徴です。直近の五輪・世界陸上・ダイヤモンドリーグの優勝者や、世界ランキング上位者だけが出場できます。
2位につけたのは18歳の嚴子怡選手(中国)、記録は68m05でした。
今季のダイヤモンドリーグ厦門では世界歴代2位となる71m74を投げている新鋭で、1投目からハイレベルな争いになっています。
場内インタビューで北口選手は「本当にありがとう。やればできると信じていました」「このスタジアムでは、素晴らしい思い出ができました」と語りました。
この会場、2023年の世界陸上で北口選手が金メダルを獲得したのと同じスタジアムです。
「まだ完璧じゃない」、狙うは70m超えとアジア大会

出典:北口榛花が衝撃の68m92!日本新記録&世界一達成!世界歴代10位の超ビッグスローで中国選手を撃破 – Doctor Moka
新コーチのゼレズニー氏は、北口選手の70m超えについて「可能性は間違いなくある」と評価しています。
本人も「まだ完璧じゃない」と話し、さらに上を目指す姿勢を崩していません。
次戦は2026年9月27日、愛知・名古屋で行われるアジア競技大会の女子やり投決勝です。予選なしの一発勝負で、21時03分開始が予定されています。
武本紗栄選手も日本代表として出場する予定です。
北口選手は「今回、日本記録を更新したんですけど、アジア大会でも日本の皆さんの前で良い数字を投げれるように頑張りたい」と意欲を語っています。
SNS上でも「リアルタイムでみれてよかった」「すごい投擲だった」といった反応が相次ぎました。この1年の苦しさを知るファンほど、喜びもひとしおだったようです。
