ダイヤモンドはなぜ親油性を持つ?指輪が曇る理由と鉱山選別の秘密

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ダイヤモンドの親油性はなぜ生まれるのか

宝石と油:ダイヤモンドが輝かないワケ

出典:宝石と油:ダイヤモンドが輝かないワケ – ジジのDADADA◇DIAMOND

表面を覆う炭素原子の末端構造が、性質の分かれ目です。

末端が水素で終わっていれば疎水性、酸素やヒドロキシル基で終わっていれば親水性を示します(Wikipedia「ダイヤモンドの物質特性」)。

吉林大学の研究チームが2020年に発表した測定では、水素終端の表面エネルギーは約43mJ/m2、酸素終端は約60mJ/m2でした(Chinese Physics Letters 37巻4号)。

水の接触角にも差が出ます。ある測定では酸素終端47.2度、水素終端81.3度、フッ素終端は103度まで達し、油をもっとも寄せつけないのはフッ素終端という結果でした。

450度以上の環境で反応ガスを使った処理を施すと、この表面特性は完全に入れ替わります。

鉱山を変えた「グリーステーブル」発明の経緯

ダイヤモンド採取におけるグリーステーブルの効率と振動モーターの重要性

出典:ダイヤモンド採取におけるグリーステーブルの効率と振動モーターの重要性 – Genuine Diamonds in AR

1893年のシカゴ万博で、アメリカ人技師ジョージ・ラブラムはデ・ビアス社の関係者と出会い、南アフリカ・キンバリーの破砕プラント建設のため入社しました。

それまでダイヤモンドの選別は、すべて目視による手作業でした(Wikipedia「George Labram」)。

1890年代後半、ラブラムの部下フレッド・カーステンが、油の性質を利用した自動抽出工程を考案します。

ラブラムは1898年にチーフエンジニアへ昇進しましたが、1900年2月9日、ボーア戦争のキンバリー包囲戦のさなかに亡くなりました。

アメリカでも稼働した油の選別台

1912年から1919年にかけて、アメリカ・アーカンソー州のKimberlite Diamond Mining and Washing Companyも、グリーステーブルを稼働させていました(Encyclopedia of Arkansas)。

適正な油温は65〜75度F、日本の感覚では約18〜24度です。冷えるとダイヤが滑り落ち、暖まりすぎると粘りすぎて回収できません。

会社はこの装置を「unerring(誤りなし)」と宣伝していました。

現代のグリース選別は「職人芸」から「科学」へ

熟練された職人による世界最美のダイヤモンドカット

出典:熟練された職人による世界最美のダイヤモンドカット – ヤーマングッチ

2018年6月11日から13日、南部アフリカ鉱山冶金学会(SAIMM)の会議がヨハネスブルグで開かれ、サスカチュワン研究評議会のJane Danoczi氏が研究成果を発表しました。

デ・ビアス社で研究員を28年務めた同氏によれば、グリース回収のパラメータはそれまで試験なしに経験則で決められていたといいます。

数字は具体的です。X線ルミネッセンス選別だと0.85〜1.2mmの粒で最大85%、1.5〜2.0mmでも50%を取りこぼし、収益損失は合計最大24.4%にのぼる一方、最適化したグリース回収なら遊離ダイヤの98〜99%を回収できました(SAIMM論文集)。

ダイヤモンドの約70%は、比重選別や磁力、X線、グリースといった従来技術で今も回収されています。

グリースはワセリンとマイクロクリスタリンワックスを4対1の比率で約98度に溶かして作られ、厚みはダイヤの最大径の8分の1から6分の1に調整されます。

指輪のダイヤが曇る原因も同じ「親油性」

ダイヤモンドの真贋の見分け方 | リファスタ

出典:ダイヤモンドの真贋の見分け方 | リファスタ – リファスタ

ジュエリーとして身につけると、皮脂やハンドクリーム、化粧品、日焼け止め、調理油までもが表面に薄い膜を作ります。

この油膜が光の透過を妨げ、輝きを鈍らせる主因です(Wikipedia「ダイヤモンド」)。

こまめに拭いているつもりでも、指先の脂は思ったよりしぶといものです。

2026年2月9日、東急百貨店たまプラーザ店のジュエリーショップCHARMYが「ダイヤモンドは油と仲良し?」と題したブログを公開し、曇りの原因が皮脂である可能性を指摘しました。

宝飾店のスタッフが白手袋やピンセットを使うのも、高価だからというだけでなく、指の皮脂が石に付着するのを防ぐためです(買取業者コラム複数)。

中性洗剤や洗顔料で洗えば油膜は落ち、輝きは戻ります。

日常的に着用するなら3か月に1回、たまにしかつけない場合でも年1回の洗浄が目安です(なんぼや)。

店頭の超音波洗浄は約5分で、無料としている店も多くあります(BRIDGE ANTWERP)。

油性ペンでわかる本物と偽物の見分け方

【本物と偽物の見分け方~ダイヤ編~】簡単にダイヤモンドの真贋を見分ける方法。

出典:【本物と偽物の見分け方~ダイヤ編~】簡単にダイヤモンドの真贋を見分ける方法。 – ジュエリーデザイナーまや

親油性を逆手にとった簡易鑑定法もあります。

油性のフェルトペンで線を引くと、ダイヤモンドは線がそのまま乗る一方、キュービックジルコニアなど親油性を持たない模造石は油をはじいて線が乗りにくいといいます(Wikipedia「ダイヤモンド」)。

水滴を置く方法も同様です。丸いまま転がればダイヤモンド、平たく広がればキュービックジルコニアの可能性があります(goldplaza、ブラリバ)。

ただし近年は簡易テストで見抜けないケースも増えており、GIAやCGLといった専門機関への鑑定依頼が推奨されています。

水の勢いひとつで回収率は激変する

日本が「ダイヤモンド」を超える新素材を開発!世界を変える驚きの正体とは?

出典:日本が「ダイヤモンド」を超える新素材を開発!世界を変える驚きの正体とは? – 日本テック探訪

SAIMM論文には、装置の運用条件を細かく検証したデータも記されています。

シュートでの水流試験では、毎秒69.6mlの流量なら全サイズのダイヤを100%回収できました。

ところが流量を355.3ml/sまで上げると、1mm粒の回収率は36%まで落ち込みます。

水温も影響します。毎秒192mlの条件で水温30度なら1mm粒の86%を回収できますが、21度まで下がると71%に低下しました。

南アフリカのカリナン鉱山では、濁度3000NTUを超える粘土混じりの水でも、閉鎖循環運転で回収に支障がなかったといいます。

ベルト上でダイヤモンドが水流にさらされる時間は、わずか10分ほどです。

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まとめ

My Hair is Bad – ダイヤモンド

出典:My Hair is Bad – ダイヤモンド – My Hair is Bad

ダイヤモンドの親油性は、鉱山の選別技術を支え、指輪の曇りの原因にもなり、本物と偽物を見分ける手がかりにもなる、ひとつの物理特性です。

炭素原子の末端構造という目に見えない違いが、19世紀末のキンバリーから現代の研究室まで、ダイヤモンドの扱い方を決めてきました。

指輪の輝きが鈍ったと感じたら、まずは皮脂を疑い、中性洗剤で軽く洗ってみるのが手軽な対処法です。

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この記事を書いた人

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